2016年8月11日

父がバイクを降りる。

8月6日から9日まで、秋田県の実家に帰ってきた。

昭和2年生まれの僕の父は今89歳。
陸軍の士官候補生として18歳で終戦を迎えた。
原付免許を取ったのが70歳の時だ。
彼はスーパーカブを買った。
僕は『ライダースクラブ』プロデュースのベーシックブローブ(クシタニ製)をプレゼントした。

以来19年間、バイクに乗り続けてきたが、今年、降りることを決意。
今回帰省してみると、納屋にあったスーパーカブと長年乗っていた自転車が両方なくなっている。

父は足腰の関節が痛み、農作業もできなくなって、去年から畑もやめている。
長年自給自足だった野菜も、今は多年草アスパラと、数種の果実があるのみで、その手入れももう、ほとんどできない。

バイクを降りる決意をしたのは、センタースタンドをかけるのがつらくなったからだという。
サイドスタンドだと、後ろの荷台に買い物荷物を積む時に不安定になる。
自転車よりもカブの方が極低速でも安定性が高いと、カブの方を買い物などに使っていたが、そろそろ限界だ。
さらに耳が遠くなり、周囲の音に気付かなくなってきて、これ以上は危険と判断したからだという。

2016/8/10 17:43 札幌市南区簾舞
ここはバイクブログとしてオープンしているので、バイクから外れたことはあまり書かないようにするが、父がバイクを降りたということが、大きな区切りのように僕にとっても感じられた。

「グローブはまだあるぞ」と父は言っていた。
「いいグローブだった。何度も洗い、ずっと使っていたら、指先に穴が開いたが。」
と言っていた。
そう、僕もあのグローブは10年以上使った。
確か左手の中指の革が擦り切れて、穴が空いたので引退させたのだ。

同じ時に買ったライダースクラブ、ベーシックグローブ。父の方が、長く、大事に使っていた。
僕もいつか、降りる日が来る。

今の時の中に、過去の時が重層に流れ、来るべき時が、遥かに重なっている。

その今を、限りなく愛おしみながら、走りたい。

2 件のコメント:

  1. いつかは愛するモーターサイクルライフを離れる時が来ます。
    何事も永遠はありませんものね。

    もっと愛車と季節を感じたかった…
    もっと愛車と走りたかった…
    そんな後悔はしたくないかもです。

    私もある時から時間の大切さを感じ、
    樹生さんと同じように「今を限りなく愛おしみながら走りたい」と思っていました。

    北海道の季節毎や…何気ない道の風景や…モーターサイクルと共にある今を…
    大切に噛み締めながら記憶に留めたいと思いながら走っています。

    長年走って来てお互い いい年になりました。
    モーターサイクルと共に良い時間を過ごして行けたら良いですね^^

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    1. selenさん、こんにちは。
      selenさんのブログを拝見すると、草原と樹々や、山の樹々だけが写っている写真も多くありますね。
      緑の美しさ、走りの旅の途中で感じて、それを切り取って写真に収めること、少し歩いてバイクから離れ、風景の中で佇むバイクと、それを包む風景そのものを写真に収めること。
      そうした写真が多くて、バイクの止め方も、撮影位置も、交通の妨げにならないように気を使っていて、そうした丁寧な行いが、上品で美しいMOTOGZZI 1100SPORTに、とても合っていて、写真の中に気品のようなものを添えていると感じます。

      私たちももう五十路半ばに差し掛かっていますね。
      これからも長く走っていくために、時にやんちゃに、しかし丁寧に、走り続けていきたいです。

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