2014年9月9日

9月の空(1)高速道

やっと2日連続の休みが取れることが決まり、旅に出ることを決めたのが金曜日。
その日の夕方、バイク屋さんへV7ゆきかぜを受け取りに行った。
ゆきかぜはゆっくりと前輪の空気が抜けていく症状が再発。
購入元であり、メンテナンスをお願いしている札幌ズームさんへドッグ入りしていた。
原因はスポークホイールをチューブレスタイヤが履けるように加工する作業に関して、何らかの不具合が発生したため。
ゆきかぜは修理を終え、タイヤの空気も抜けなくなって、僕を待っていた。
夜、急いで宿を取る。インターネット予約はもう完全に一般化したようだが、僕は何年やってもなじめない。旧世代の人間だ。

出発の荷造りをして早めに就寝した。

2014/09/06 5:21 自宅前
朝、4位半に起きる。
以前はツーリングの朝は3時頃起きて、4時には出発し、午前中に距離を稼ぐのが僕のスタイルだった。
朝、路上で夜明けを迎える気持ちよさは、本当に素晴らしい。
しかし、50歳を過ぎ、体力の衰えも、とみに感じるようになった。
翌日に疲れが残ってしまうのは、50代の働き方を求められる現状では厳しい。
いつものリズムをなるべく崩さないように、夜が明けてからの出発にし、少し早目の4時半起床とした。
朝食を摂り、ゆっくり準備をして、家の前で出発前の撮影をする。
夜は開け、すでに明るく、鳥の声が聞こえてきていた。

2014/09/06 5:35 札幌市
土曜日の朝、まだ道は混んではいない。
高架を走る高速道路の橋げたに、朝日が反射していた。
少し前までは4時台で明るかったのに。秋は光から、空からやって来る。

2014/09/06 5:36 札幌市
いつもは高速を使わない僕だが、今日は使う。
向こうでゆっくり時間を使いたいからだ。
高速インターが近づいてくると、この時間でも結構な数の車が走っている。
大都市に住んでるなあ…と思う。
2014/09/06 5:47 道央道
札幌市の市街地を環状に迂回する札樽自動車道に乗り、さらに道央自動車道を旭川方面へ乗り替えた。
未明雨を降らせた雲も去って、札幌は快晴。
東の空に太陽の輝き。

高速道路に入って、ゆきかぜ(モトグッチV7スペシャル)をゆっくりと解放してやる。
ゆきかぜは各ギヤ7000rpmでリミッターが作動する。
計算上、5速の7000rpmは約190km/hだが、免許を失うのが怖くて、空いた高速道路でも出す気にはなれない。
朝の早さ。空いた道央自動車道。速い方の流れに乗る形で、淡々と距離を稼ぐ。

これから進む方角、左前方遥か彼方には、雨雲の暗い影が見える。

2014/09/06 6:26 道央道
 ついさっきまで、降っていたに違いない路面と、空気の感覚。
それでもゆきかぜは淡々と、走り続ける。
車体総重量で200kgを切る軽さ。ノンカウルで空力的にダウンフォースを稼ぐわけでもない、
ネイキッドモデルのV7ゆきかぜ。
しかし、直進安定性は申し分ない。
GPZ1100(装備270kg超)がどかーんと直進していくのに比べて、V7は、軽やかに、しなやかに直進する感じだ。
これは縦置きクランクとシャフトドライブの影響が大きいと思うが、ここでは繰り返すまい。
だが、よくモトグッチに言われる「矢のような」という形容は、V7にはあまりあてはまらないように感じる。
むしろ、スリムな魚がまっすぐ泳いでいくような、そんな感じの直進安定性だ。

 少しのゆらぎとしなやかさを感じさせながら、しかし、直進性に関しては何の不安もない、この感覚はなかなかに気持ちのいいものだ。

2014/09/06 6:36 道央道
雲の切れ間に行くと、太陽がまぶしい。
気温は19℃。

やっと都会を抜け出して、今、ツーリングに出ているというのに、気分が高揚してこない。
これは、最近、毎回のことだ。
気持ちが日常から離れるのにも、時間が要る。
風景の中を走り、時間的にも、距離的にも、暮らしている街から離れていった時、徐々に自分の真ん中に自分が帰ってくる。

それまでは、ひたすら、距離を稼ごう。

高速道路でも、美しい風景にはたくさん出会えるのだが、道路の上の表情が高速道路として規格上の同じ表情をしているため、また、道のすぐ脇に地元の店があったり、人が歩いていたりしないため、違う土地を走っている、という実感には、あまり浸れないことが多い。

その分、自分自身と向き合うことになる。

次々に頭の中に去来する仕事の内容…。無理に払いのけることをせず、時間と距離とを稼ぐ中で少しずつ静まっていくのを、ただ眺めるようにする。

2014/09/06 6:58 道央道
 旭川を過ぎると、道は雨雲の下に完全に入った。
全車の巻き上げる水しぶきが、ヘルメットのシールドについて視界を低下させる。
今現在は降っていないのだが、5分前までは確実に降っていただろう。
そんな路面が続く。
2014/09/06 7:04 道央道 比布大切PA
家を出て1時間半が過ぎた。
休憩のため、比布大切PAに入った。
小さなPA。トイレと飲み物の自販機があるくらいだ。
しかし、建物に一番近い一等地に屋根付きでバイク用の専用駐車スペースがあった。
そこに入れさせてもらい、トイレ休憩をした。
2014/09/06 7:04 道央道 比布大切PA
先は長い。
頑固な肩凝りと頭痛持ちの僕は、一度激しい肩凝りや頭痛が始まってしまうと、バイクで走りながらそれを改善することは非常に難しい。場合によっては、走れなくなることすらある。
疲れる前に、凝る前に、止まって体をほぐし、痛みを予防する必要があるのだ。
下道のツーリングの場合は1時間に一回。
高速道路の場合も、1時間に一回は休むように心がけている。
が、今日はここまで来てしまった。

このPAを出たら、すぐに道は北に向かう道央自動車道と、紋別方向へ進む、旭川紋別自動車道に分かれる。
今回は旭川紋別自動車道に乗り、東を目指す。
ここから先は、無料区間だ。
料金所でここまでの通行料金を払う。
きっかり3000円だった。

2014/09/06 7:50 旭川紋別自動車道 
旭川紋別道を東へ。
また淡々と流す。
相変わらず、路面は濡れたまま。

上川地方と、網走地方を分ける北見峠をトンネルで越えると、前方に雨雲の切れ目が見えてきた。
ここまで、ずっと4000rpm~5000rpmで走って来たからか、手の指先が痺れている。
90°V型エンジンのモトグッチは理論上一次振動がゼロで、回すほどに振動が収束していくことで知られている。
しかし、僕のV7ゆきかぜ号は、高回転まで回しても振動はなくならない。
細かい、しかしはっきりした振動が、ステップとハンドルバーに出るのだ。
2時間弱、その振動に晒されてきた指先が、痺れて、少し痛みを感じるようになってきた。
このしびれは、ゆきかぜに乗って初めて感じるものだ。
もっと飛ばすか、もっとゆっくり走るかしたら、このしびれにはならなかったのかもしれない。
何か、共振するような、そんな振動だったのだと思う。

2回目の休憩を取ることにした。

2014/09/06 7:53 旭川紋別自動車道 白滝PA
白滝PAに入った。
ここは売店もある大きめのPAだが、まだ売店も開いていない。
トイレと自販機だけが利用可能だ。
写真左側が今着た方角。右側がこれから行く方角。
ちょうど峠が天気の分かれ目になっているらしい。
さっき行ったばかりなのに、もう一度トイレへ。
熱い缶コーヒーを買った。
2014/09/06 8:01 旭川紋別自動車道 白滝PA 
車が一台。やってきたほかは、まだ誰もいない駐車場。
敷地の隅、でも建物の近くのいい位置にあるバイク専用の駐車場。
地べたに腰かけるのは、他の利用者から見たときに不快だからやめた方がいいと、どこかの本で書いてあった。
でも、ひとり、片隅で、そっと腰かけさせてもらい、地図を見ながら缶コーヒーを飲んだ。
手を開いたり閉じたり、さすったりしていると、痺れも解消してきた。

深呼吸。

都会の空気が走ってきたことで体の中で入れ替わってきている感じがする。
ゆっくり進もう。
今日は、帰らなくていい。
缶コーヒーをゴミ箱に入れ、再び走り出す。
旭川紋別自動車道は、もうすぐ終点だ。(つづく)

2 件のコメント:

  1. 樹生さん☆おはようございます。
    ツーレポ、楽しく拝見させて貰ってます。最初はウェットで大雪の山を越えると
    ドライ、いい感じになってきました。出発の朝、静かな街を抜けるシーンは
    大好きですね~。都市から脱出って感じがいいです!
    高速に乗っている時は、街の呪縛があるような気がして面白くないです。
    距離を稼ぐにはしかたないですね~。道央地区のごちゃごちゃした町を
    パスできるのと、時間短縮するにはこの方法がベスト。
    ワープですよ(笑)
    ツーリングには非日常のエッセンスが必要で、都会の風景である高速に
    乗っている間はつまらなく感じるのでしょうね~。
    白滝の山々に翼を休めるゆきかぜと、樹生さんのコーヒー休憩のあたり
    から、テンションが上がってきましたね~(笑)
    天気も良さそう!ツーリングの醍醐味だな~!いいなー。行きたいな~!
    道東最高ですね~~

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    1. いちさん、こんにちは。
      そうですね。高速に乗っている間は、移動区間という感じで、「異国」を旅するツーリングの感覚になりきれていないかもしれません。ただ、遠くへ、今、向かっているんだという意識が、そして自分の出す速度がその分日常を後方へ置き去りにしているんだという意識が、旅の心を支えてるのかもしれません。
      ただ、車列の後ろを延々と距離を稼げないまま走るのも、肩も凝りますし、心もやられますね。
      やはり僕は、田舎道を走るのが一番好きなんだと思います。
      でもでも、高速も、便利だし、いいものだとも思います。安全ですし。
      もう少し安かったらいいのですが…。

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