2013年9月15日

深いバンク角


V7の深いバンク角での旋回特性について。

何度か言っているように、日常的な使い方においては、V7のバンク角は十分に深く、ツーリング先で出会う曲がりくねった道でコーナリングを楽しむスポーティーな走りをしても、バンク角不足を感じることはあまりない。




上の写真はモトグッチ社のHPにあったものだが、おそらく低速~中速の、かなり回り込んだコーナーを、公道上では十分に倒しこんで旋回している状況ととっていい。
最初に接地するサイドスタンドの足をかける部分と路面の関係を見ても、まだバンク角には余裕があり、これ以上倒しこむような走りでは、フルバンクの旋回力にすべてを任せてそれ以上のコントロールの効かない、スポーツライディングとしてむしろ危険性が増して面白みが減っていく領域に入っていく。
僕のゆきかぜ号に標準装着されているピレリ、スポーツデーモン(オンロード用バイアススポーツタイヤ)では、これくらいのバンクや荷重では、グリップ感を潤沢に伝えつつ、ブリップ力の余力を感じさせてくれるから、タイヤのグリップ力に不足を感じることは、通常ではあまりない。

先日、サイドスタンドを接地させてしまったときは、下りのヘヤピンカーブを走行中で、Rは10m位の本当に小さなカーブだった。
速度も十分に落とし、リーンアウト気味にくるっと旋回させる、ジムカーナの低速ターンのような回り方をしている最中に接地したのだが、グリップ力にはまだまだ余裕があり、バンク角も自覚症状としてはそんなに深くしている感覚はなかった。(下手だからというのもあるだろう)



上の写真は伊丹氏のライディングで、以前UPしたものだ。
中間的なバンク角だが、フロントサスが沈み、コーナリングの荷重が大きいことが分かる。
見えている右手はブレーキレバーから離れ、アクセルは開いている。交換されたリヤショック(オーリンズ)のせいか、あるいはライダーの体重差か、リヤサスは一枚上の写真に比べれは沈まず、トラクションとアンチスクワット効果によって旋回力を増しているように見える。

やはり、公道上、通常域ではこれくらいのバランスが一番気持ちいいようだ。


この和歌山氏の写真では、バンク角はさらに深まり、ほぼ、フルバンクに近い。美しいリーンウィズ旋回だ。上体の角度が車体の角度に対してわずかに起きている。これもまた中速コーナー。スキーでエッジを効かせて旋回しているような、そんな体の使い方だ。
この写真を見ると、フロントタイヤの向きが車体に対してほんのわずかに右に切れているかのように見える。もちろん左カーブである。フルノーマルの試乗だが、フロントサスはやはり沈んでいる。コーナリング速度はかなり速そうである。
バイクや自転車は旋回中は前輪と後輪の軌跡は同心円を描き、前輪が外側、後輪が内側を描くことが多いのだが、モトクロスやダートトラックのシーンを思い出すとわかるように、後輪がスライドし始めると、この内輪差は逆転し、後輪の方が外側を通ることになる。
上の写真では、本当に舵が右に切れているかどうかは微妙だ。もともと速度の出るコーナリングでは、グリップ走行していても舵角は1度~3度程度と言われていて、Uターンや交差点のようなカーブでないかぎり、前輪が大きく舵を切ることはない。微細に首を振りつつ、バランスして走って行くのが、二輪のコーナリングである。(僕は、コーナリング時にこの「舵角」をコントロールすることを意識の前面に出すことはあまり好まない。舵角は結果としてつくものだと思っているからだ。)
しかし、ほぼ前輪と後輪の軌跡が重なるような状態で走っていることに間違いはなさそうだ。
つまり、おだやかに、少しずつリヤがスライドしながら回り込むようにして旋回しているのだ。

これは、V7で走ると、何となくだか実感できる感覚だ。
幅の狭いバイアスタイヤのスポーツデーモンのグリップ感は、以前乗っていたGPZ1100+メツラーZ6の幅広ラジアルタイヤと比べて、軽い感覚だ。
GPZとメツラーがべたっと路面に張り付き、またはがっちり食いつき、その上で旋回していく感じだったのに対し、V7+スポーツデーモンは、バンクして荷重を掛けていくと、微妙に接地面が動きつつ、グリップしている感じなのだ。
むろん、限界はラジアルの方がはるかに高いのだが、なんとなく接地面が動きつつも「ずるっとは来ない」という安心感を与え、しっかり路面を掻いて曲がっていく。スポ―ツデーモンは、18年ラジアルに乗っていた僕には新鮮だった。

僕の勘違いかもしれないのだが、その感覚の延長線上に、写真の和歌山氏のライディングがある感じがするのだ。
この領域で走らせると、それはまた一段高いエネルギーをやり取りするスポーツライディングとして、とても楽しめるような気がする。

さて、和歌山氏のライディングの美しさは別として、
V7では、フルバンクに近い深いバンク角で旋回した場合、そこからの旋回力やラインのコントロールに右手の効果があまり感じられない気がする。
具体的に言えば、フルバンクで旋回に入ってからアクセルを大きく開けてトラクションを加えても、旋回力が増して内向力を高めることが感じにくく、そのままマシンなりに円弧を描くだけになるような感覚があるのだ。
浅いバンク角から中間的バンク角までは右手のコントロールが容易で、しかも効果が分かりやすく、非常に楽しいのに、フルバンクでは、その効果が薄い。
公道でフルバンクのまま長く旋回する機会など滅多にないし、あったとしても危険回避の意味から何回かに分けて「向き変え」する多角形コーナリングの方が望ましいのはわかる。
しかし、公道上だからこそ、どんな状況でもライダーの意思が反映される余地をいつでもできるだけ残しておきたいのだ。

バイカーズステーション誌ではオザワR&Dの小澤氏のセッティングとして、リヤのプリロード(性格にはリヤショックのボディ上のネジ山の締め込み代)を23mmにする(ノーマルは17mm)ことを推奨しているが、これはリヤを上げてアンチスクワット効果を上げ、フルバンクでの反応性を高めることを狙いとした(もちろん、浅いバンクでも同様)と考えられる。

また、上の写真の伊丹氏はV7カフェでレースにも出場しており、その結果はパワー不足からストレートで抜かれまくって低位低迷。それは別に問題ではない。もともとパワーのないバイクであることは前提としているからだ。しかし、伊丹氏は「曲がらない」ことにも悩んでいる。フルバンクで旋回するサーキットの場合、車体が内側へ来てくれず、ずるずると外側へ流れて行ってしまうらしい。
リヤを上げるセッティング変更は、当然レースに向かってはしているはずだから、サスセッティングだけで深いバンク時の旋回力の不足(ただし、レースレベルでだが)は解消しないのかもしれない。

公道を走る一般ライダーとしては、フルバンクからでも右手の開け閉めや荷重の掛け方でコントロールできる幅の広い方が断然楽しめるし安全なのだが。

これは試してみないとわからない。

次に時間が取れ、ワインディングを思い切り走れる機会がきたときには、プリロードの変更をぜひ試してみようと思う。

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